馬毛ブラシと豚毛ブラシを両方用意しなければいけない理由

今回は馬毛ブラシと豚毛ブラシの特性について解説する。ブラッシングは革靴の手入れの中で肝となる工程であるが、種類や目的を理解して実践している人は意外と少なく、また知らず知らずのうちにかえって革靴を傷つけている可能性もある。

ブラッシングの行程は、ただ表面の埃や汚れを取り除くだけではなく、クリームを浸透させたり、革の素材を活かし艶を出したりするための重要なアイテム。メンテナンス方法を誤ると革そのものを傷付けてしまうため、この記事は何度も読み返してほしい。

馬毛ブラシ・豚毛ブラシ・化繊ブラシの特徴

メンテナンス用のブラシは4種類。写真の左から、馬毛ブラシ豚毛ブラシペネトレィトブラシ(豚毛)化繊ブラシ(歯ブラシでもOK)。特徴を簡単にまとめると次のようになる。

ブラシ 特徴・用途
馬毛ブラシ 毛先が繊細で軟らかい。仕上げに使用するブラシ。
豚毛ブラシ 毛先が固く鋭い。埃や汚れを取り払うためのブラシ。
豚毛ブラシ(ペネトレィトブラシ) 毛先が固く鋭い。クリームを浸透させたりするブラシ。
化繊ブラシ ポリエチレンでできている一般的なブラシ。コバ(境目)や縫い目など、細かい所の汚れをかきとるためのブラシ。歯ブラシでもOK。

ブラッシングの順番

ブラッシングの順番には実は決まったものが無い。革靴の状態や種類によって、見極めながら行うため型にはまったやり方は実は存在しないのだ。参考までに私がいつもやっている順番を公開しよう。

★用意するもの★
馬毛ブラシ、豚毛ブラシ、豚毛ブラシ(ペネトレィトブラシ)、化繊ブラシ(歯ブラシでもOK)、クリーナー、リキッドクリーム、布

  1. 豚毛ブラシで表面に付着した埃や汚れをブラッシングして取り払う
  2. 化繊ブラシでコバや縫い目の汚れを掻き取る(革表面に触れないように気をつける)
  3. ペネトレィトブラシを用いてクリーナーを満遍なく塗り込む
    ※リキッドクリームを使う場合はこのタイミングで塗り込む
  4. 数時間放置したあと馬毛ブラシで仕上げツヤ出し
ペネトレィトブラシは必ず準備!
クリーナーは布で塗り込んでも表面のみで内部には浸透していない。浸透させるために「③」でペネトレィトブラシを用い塗りこむようにブラッシングする。これによってクリーナーが革内部に浸透し品質維持につながる。ペネトレィトブラシについては通常の豚毛ブラシ以上に必ず揃えておきたい。またクリームの色によって分ける必要があるため、少なくとも2~3本は準備すること。

馬毛ブラシ

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馬毛ブラシは革表面に付着した埃や汚れを落とすために「最初に」使用するメンテナンスアイテムと勘違いしている人が多いが、実は最後の仕上げのツヤ出しに使用する。従って、馬毛ブラシの毛は常に清潔なはず(きれいになった状態の上に使用しているため)。

革靴を覆うくらい大きなブラシで、優しく毛先で空気を通してあげるイメージで「さっさっ」とブラッシグをする。豚毛のようにコシがあるものではなくて良いので、毛先が柔らかく繊細なものを選ぶ。

豚毛ブラシ

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豚毛ブラシは最初に全体の汚れを振り落とすために使用するため、固くコシがあるものが良い。しかし化繊ブラシのように革を傷付けてしまうものはNG。

化繊ブラシ

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化繊ブラシは靴の縁沿いやコバ(境目)、縫い目など、細かい部分の土埃・汚れの除去として優れている。繊維が硬すぎるため革を傷付ける原因になるため、この部分以外には使わない。使い古した歯ブラシでもOK。化繊ブラシについては新たに買う必要は無いし、お金をかけるポイントではない。メンテナンス用品も濃淡を付けて購入するようにしよう。

ブラシの混合は絶対NG!使い分けが重要

ブラシは、一つ一つの工程ごとに用意することが望ましい。例えば、最初の表面の土埃・汚れのブラッシングに馬毛ブラシを用いて、最後の仕上げにも同じ馬毛ブラシを用いては、せっかく綺麗にした汚れが付着してしまう。

ブラシは値段の良し悪しがはっきりしたものばかりなので、あまりに安いものばかりだと「メンテナンス」にならないこともある。面倒かもしれないが馬毛ブラシ、豚毛ブラシ、ペネトレィトブラシ、化繊ブラシ、それぞれを用途・工程別に準備しよう。ペネトレィトブラシは消耗品なので何度か買い続けることになるが、馬毛ブラシと豚毛ブラシはそうそう買い換えることはないので質の良いものを一つ揃えておくのも可。

初心者で何を揃えればいいか分からない方は、以下のようなシューケアセットを購入して取り掛かる方がかえって安く収まる。
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また「ブラッシングの順番」の項でも解説したが、メンテナンス方法は人によってバラバラなところがある。革靴のメンテナンスは毎日行うものなので、次第に「自分のやり方」というものが確立されてくる。

それまでは私のやり方を真似してくれて構わないし、その過程の中で「こうしよう」「こっちのほうが綺麗になる」「あれが必要だ」と工夫を凝らすようになるはず。セオリー通りガチガチなメンテナンス方法は続かないし、もっと気楽に毎日の靴の手入れを楽しんでいってほしい。