ビジネスの場では身だしなみへの配慮が欠かせません。
スーツやネクタイ、そして忘れてはならないのが革靴です。
足元は自分が考える以上に目立ち、他人への印象を大きく左右します。
ビジネスシーンで相手により好感を与えるためには、どのような革靴を選ぶべきでしょうか。
この記事ではビジネスにふわさしい革靴や、コストパフォーマンスの良い革靴ブランドをお伝えします。
ビジネスに適した革靴の選び方
まずは、どの種類がビジネスに適しているかを確認しておきましょう。
1足目にはストレートチップがおすすめ
ビジネスにもっともおすすめのデザインはストレートチップです。
ストレートチップとは、内羽根式の甲革に横一文字の切替を組み合わせたデザインのこと。
あらゆる革靴の中でもフォーマル度は最も上。
どのような場面に履いても失礼にあたりません。
黒のストレートチップは式典や大切な商談などかしこまった場面に。
ブラウン系のストレートチップは、パーティーやカジュアルシーンにも最適でしょう。
ストレートチップはあらゆる場面に履ける汎用性の高いデザイン。1足は用意しておきたい革靴です。
2足目以降に選びたいバリエーション
ビジネスシーンで使用する2足目の革靴。
ストレートチップの次にフォーマル度が高いのは、順に以下の3点です。
- プレーントゥ
- モンクストラップ
- ウィングチップ
プレーントゥ
プレーントゥとは、プレーンな(装飾のない)つま先を組み合わせたデザインのこと。
ストレートチップの次にフォーマルとされ、ビジネスシーンからカジュアルシーンまで幅広く使えることが特徴です 。
色や装飾がつくとカジュアル寄りになります。
モンクストラップ
甲をストラップとバックルで留める方式の靴を、モンクストラップと呼びます。
つま先に飾りのないプレーンモンクストラップは、ビジネスシーンに。
華やかさもあるので、パーティーやカジュアルシーンにも向いています。
ただし、弔事には避けたほうが良いでしょう。 金具がカジュアルな印象を与えるためです。
ウィングチップ
ウイングチップは、つま先の切り替えが鳥の翼(ウイング)のように、なめらかなM字に縫い付けられているデザインです。
革の切れ目をギザギザにするピンキングが施されたり、飾り穴があしらわれたりと、華やかなデザインが特徴。
パーティーやカジュアルシーン、ラフな雰囲気のビジネスシーンに適しているでしょう。
色は黒やダークブラウンを選ぼう
ビジネス用途の革靴では、定番カラーの黒やダークブラウンがおすすめ。
その上で、革靴の色と革小物(時計、ベルト、カバンなど)との色の組み合わせに留意しましょう。
スーツとのコーディネートは、革小物同士の色をそろえるとまとまります。
例えば、ダークブラウンの革靴にはダークブラウンのベルト。時計の革ベルトも同色で統一すると良いでしょう。
素材は牛革のスムースレザーがおすすめ
靴の素材は牛革、その中でも表面に特別な加工を施していないスムースレザーがおすすめ。
スムースレザーは素材の耐久性も高く、メンテナンスも容易です。
1足を長く愛用できるでしょう。
合成皮革は総じて革に比べて耐久性が低く、素材の経年劣化を避けられません。
もし合成皮革の靴を選ぶなら、雨の日用などの使い捨ての靴に留めておきましょう。
メンテナンス方法は、後述する『日常のメンテナンスとメンテナンスに適した革靴』の項目で解説します。
機能性もチェックしよう
デザインや色・素材の他に、革靴の機能もチェックしておきましょう。
最近の革靴は、長時間歩いても疲れにくい機能インソールを備えたり、防水や撥水機能を備えたりしたものも珍しくありません。
甲の素材だけではなく、靴底の素材や耐久性などもチェックポイントのひとつです。
しなやかな履き心地を求める場合は革底。
雨や摩耗に強いのは合成ラバー底。
自分の用途に適した革靴か、細部まで仕様を確認してみましょう。
革靴のサイズ選びで気をつけたい3つのポイント
革靴選びで絶対に妥協したくないのは、「サイズの合う革靴を選ぶ」こと。
足にフィットした革靴を選ぶポイントをまとめました。
1.つま先のゆとり
革靴に限らず、靴選びで一番注意したいのがつま先のゆとりです。
必ず”立ち上がった状態”で、靴の中で指を自由に動かせるかどうかを確認してください。
立ち上がって体重がかかると、足の指は前方に広がります。
そのため、座った状態では正しいチェックができません。
指先が靴の内側で自由に動かせるようなサイズがベストです。
ただし革靴は、履き続けていくとサイズがやや大きくなります。
最初は硬かった革が自分の足になじむのは、革靴の醍醐味。
それを見越してサイズを決めてくださいませ。
2.かかとのフィット感、くるぶしの高さ
次に確認するのは、かかと周辺。
靴のかかと部分は足の左右のブレを抑える役割を担います。
遊びの部分が大きすぎず小さすぎず、きちんとフィットしているかを確認しましょう。
同時にチェックしたいのが、くるぶしの高さです。
くるぶしに靴が当たって痛みがあるようなら、インソールで高さを調整するか、他の靴を選ぶ方が良いでしょう。
3.土踏まずのブレ
土踏まずのフィット感もとても大事。
土踏まずは足の前後のブレを抑制する役割があります。
ここが靴と合っていないと、歩くたびに靴が遊んでしまうのです。
靴が傷んだり歩き方に歪みが出てきてしまいます。かかと同様に隙間なくフィットしているか。
革靴の製法にもこだわろう
革靴は、デザインや色・素材・サイズの他にもこだわりたい部分があります。
それはアッパー(甲革)と靴底を取り付ける「底付」の製法。
代表的な製法は以下の4つ。
この中でもイチ押しなのは、グッドイヤーウェルト製法です。
1. グッドイヤーウェルト製法
2. マッケイ製法
3. ステッチダウン製法
4. セメント製法
グッドイヤーウェルト製法とは
グッドイヤーウェルト製法は、複数の縫い方で仕上げます。
まずアッパーとウェルト(細革:靴の周囲を囲うパーツ)を「すくい縫い」で縫い付け。
次にウェルトと靴底を「出し縫い」します。
堅牢かつ防水性が高く、底付けに接着剤をほとんど使いません。そのため、足なじみが良いのが特徴です。
後述するメンテナンスや修理にも有利な製法でございます。
靴の製法を見分ける方法は?
革靴に詳しい人ならひと目で靴の製法が分かりますが、製法の判断は慣れないと難しいもの。
専門店のスタッフに確認するのが一番確実です。
例えば、グッドイヤーウェルト製法の見分け方は、ウェルトと底を縫い付ける出し縫いの有無です。
しかし、ステッチダウン製法にも出し縫いがかけられているほか、出し縫いのように見える”飾り”の場合もあります。
そのため、見た目で製法を判断するには靴に精通していないと難しいのです。
靴の製法が気になったときは、迷わずスタッフに確認しましょう。
良心的な専門店であれば、快く答えてくれるはずです。
日常のメンテナンスとメンテナンスに適した革靴
革靴にはメンテナンスが欠かせません。
いくら良い革靴を履いていても、ホコリをかぶった状態では台無しです。
また、メンテナンス次第で長持ちするのも革靴の良さのひとつ。
大変に思うかもしれませんが、大丈夫。 メンテナンスに適した革靴と、その手順をご紹介いたします。
日常のメンテナンスの手順
日常のメンテナンスは、以下の手順で行います。
1. 靴ブラシで表面のホコリや汚れを落とす
2. 靴クリーナーで古いクリームと汚れを落とす
3. 靴クリームを塗布する
4. 必要であれば防水スプレーを使用する
革靴を履く頻度にもよりますが、上記のお手入れを2週間に1度ほど行うとよいでしょう。
メンテナンスの行き届いた靴は美しく、周囲の好印象も間違いなし。
それだけでなく、実は経済的でもあるのです。
ディスカウントショップの革靴はコスパが悪い
良い素材と確かな製法で作られた革靴は、コストパフォーマンスに優れます。
手入れ次第ですが、5〜10年はもつでしょう。
ディスカウントショップやネットショップで、数千円の値段で売られる革靴を見かけることもあるかと思います。
ただ、それらの革靴の大半は合成皮革が用いられてい。
修理に耐えられる素材や製法ではありません。
半年から1年で寿命が尽きる、使い捨てのような革靴です。
どのような場面で履いても恥ずかしくない革靴を、長く大切に履くのか。
安物の革靴を毎年2足、3足と買い換え続けるのか。
なにより、職場の人々や取引先の方々に、あなたの足元は見られているのです。
コスパがいい、ビジネスにおすすめの代表的な革靴ブランド
良い素材と確かな製法で作られた革靴を選ぶ。
そうおすすめしましたが、はじめから20万を超えるような高級本格靴を選ぶ必要はございません。
2〜3万円代でも素晴らしい革靴が手に入ります。
日本で人気が高く、コスパのいい革靴ブランドをご紹介しましょう。
REGAL(リーガル)
REGAL(リーガル)は、日本を代表する靴ブランドです。
1961年、『日本製靴』とアメリカの『リーガル・シュー・カンパニー』との技術導入契約で誕生しました。
グッドイヤーウェルト製法を軸にしたドレスシューズを多く手がけています。
Scotch Grain(スコッチグレイン)
スコッチグレインは、昭和39年(1964)に創業したヒロカワ製靴のオリジナルブランドです。
「品質主義」というコンセプトのもと、良い材料を無駄なく使い、本当の意味でのコストパフォーマンスの良さを目指しています。
伝統のグッドイヤーウェルト製法と良質な革を採用した、コストパフォーマンスに優れた革靴が特徴です。
Crockett& Jones(クロケット&ジョーンズ)
クロケット&ジョーンズは、チャールズ・ジョーンズ氏とジェームス・クロケット氏により、1879年にイギリスのノーザンプトンで創業されました。
スコッチグレインやリーガルより値が張りますが、こちらもコスパの良さで知られています。
多種多様のOEM生産(他社のブランド製品を生産すること)で培った技術には、定評があります。
伝統的な英国靴作りと素材の良さで、人気を博すブランドです。
まとめ
身だしなみを整える上で、忘れてはならないのが革靴です。
ビジネスにふさわしい革靴を選ぶことで、相手があなたに抱く印象も違ってくることでしょう。
長く履ける1足を選ぶなら、私は「牛革+グッドイヤーウェルト製法」の革靴をおすすめいたします。
この記事が、ぴったりの革靴を探す手助けになれば幸いです。
<参考書籍&サイト>
靴磨きの本:亜紀書房 長谷川裕也著
革靴完全読本:エイ出版社
紳士靴の教科書:株式会社スタジオクリエイティブ
最高級靴読本:株式会社世界文化社リーガルコーポレーション