求人を見ていると、会社によっては給与が月給ではなく、「年俸」で表記されていることがある。日本の企業は給与形態を月給制にしているところが多い。その理由は労働基準法第24条による、毎月1回以上、一定の期日までに賃金を支給されることが定められているため。
年俸制は役員や部長といった管理職に設けている制度。ただ近年グローバル化が進み、一般社員にも年俸制を導入している企業が増えてきた。
年俸制と月給制の違い
年俸制
海外の企業では年俸制を導入しているところがほとんどで、プロスポーツ選手のように給与の金額を1年単位で定めている。この制度は成果主義を基にして生まれた給与形態である。
ただ労働基準法で定められているように、毎月1回の支給ルールに基づき、年俸制でも最低12分割して支給されるようになっている。ただ会社によっては14~16分割して1~2ヶ月分を夏季・冬季のボーナスとして支給しているところも多い。
月給制
月給制は会社で決めた雇用契約に基づき、契約で定めた基本給を毎月支給する制度。交通費や残業手当、住宅手当なども毎月の給与に上乗せされる。基本給を導入している企業では社員の年齢や勤続年数など、いわゆる年功序列の形で反映されやすい傾向にある。
また夏季・冬季のボーナスに関しても、会社の業績によるもので変動するため、予め年収が分かるものではない。
年俸制のメリット
- 年収が把握できる
- 成果が正当に評価されやすい
- ローンを組みやすい
- 月収が安定する
年俸制の魅力は完全成果主義になっていること。前年度の成果が翌年に反映されるため、増額幅が大きく社員のモチベーションが高まりやすい。また一度決められた年俸を企業は合理的な理由がない限り、容易に変更できない(労働条件の不利益変更にあたり労働契約法第8条に違反するため)。
ローンを組む際も年収をベースに査定されることが多く、年俸制のほうが計画を立てやすい。また1年間で支給される賃金が決まっているため、もし1年間で仕事での成果が出ないときでも、その年の給与は安定する。
年俸制でも残業代は支給される
「年俸制だから残業代は支給されないのでは?」と思われがちだが、労働者が所定所定労働時間を越えた残業に関しては、その残業時間に対応した残業代を支払う義務が会社に生じる。
しかし年俸に対していわゆる「見込み残業」を含むことを雇用契約に示し、労働者本人の同意のうえであれば、会社は別途で支払う必要がなくなる。
年俸制のデメリット
- 1年間給与が上がらない
- 評価されるのは翌年
- 諸手当が反映されるのも翌年
年間の支給額が決まっていることは、逆にデメリットになるケースもある。基本的には一度給与が上がってしまうと、それ以上の成果を出さないと翌年の年俸が上がることはない。
会社の業績が良くても、支給されるボーナスの金額は常に一定。評価に関しても、昇進し役職が付いても給与に反映されるのは翌年になる。また家族ができたり、引越したりしても、手当の額が増えるわけでもない(会社によって異なる)。
年功序列がない
月給制を導入している企業では、勤続年数に応じて昇給されることがあり、同じ会社に長く居続けることで受けられる恩恵がある。しかし年俸制は完全実力主義で、成果を上げられない方にとっては居心地が悪い。
若くても正当に評価され、給与に反映されることは良いのだが、年を重ねる毎に負い目を感じてくることもあるだろう。プロスポーツ選手の世界でも、年齢を重ねる毎に厳しい戦いになるのと同じことだ。
今後は年俸制を導入する企業が増加
極論を言うと年俸制でも月給制でも会社からの支給額や扱いに大差が生じるわけではない。給与形態が少し変わるだけで、月給制の会社でも実力主義にしている会社も多い。
ただ年俸制を導入する企業が増加してくるのは間違いない。その理由として企業にとっては1年通して安定して活躍できる営業マンかどうか判断する指標となるからだ。実力主義であることを懸念する方も多いが、どこの企業に入っても遅かれ早かれ実力がないと昇給はまずありえない。
これまで月給制だった方でも、自分の能力を試す良い機会として転職の際に年俸制の企業に挑戦してみるのも1つの手段だ。