会社の業績不振で勝手に給与を減らされたときの対処法

業績不振のため会社から給与を「勝手に」減らされた場合、然るべき法的措置を取ることができる。従業員の合意なしで減給することは法律で禁止されている。たとえ合意してもその減給額や内容が法律に反していれば無効となる。

会社が一方的に減給することは違法

労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

労働契約法第8条

減給は「労働条件の変更」に当たるため、本人の合意なしでは認められない。また会社が一方的に労働条件を変更した場合は無効になることもこの法律で定められている。もちろん無効となると減給前の額での支給となる。

合意しても減給が無効になるとき

上記のように合意していない減給は無効となるのだが、会社側に脅されて止むを得ず合意してしまったときでも無効となることがある。

減給方法について説明されていない

合意した際に会社側から減給される方に対して、減給額の計算方法について説明していない場合も無効となる。一方的に減給されることと同様に、使用者である会社と労働者の関係が対等だと判断されない限り、その労働条件の変更に対する合意は認められない。

法律に反する減給額である

もし就業規則で減給の制裁を明記している会社でも、その額が法律に反する場合も無効となる。

就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

労働基準法第91条

この法律により月の労働日数が約20日の場合、減給額は月収の約10%以下でとどめないとならない。会社からの大幅な減給は労働者の生活を脅かすことを意味し、それを保護するために定められた。

就業規則に反する

労働条件を変更されても、その内容が就業規則に反することであれば無効となる。

例えば「来月から月収を19万円に減給するぞ」と言われても、就業規則で従業員の月収を20万円に設定しているとその減給が無効となる。たとえ月収20万円貰っている方が10%以下である減給額であっても、それが無効となるケースがあるということだ。

就業規則について
従業員が10名以上いる会社では必ず就業規則を作成するように義務付けられている。法律に基づいた会社のルールで、その内容には勤務時間・休日・給与の計算方法・支払日・昇給・退職について明記することとなっている。

会社側に給与の引き下げを申し立てる方法

減給された方が以上のどれかに該当している場合、本人の合意に関係なく会社側に意義を申し出ることができ、裁判となった場合ほぼ100%勝訴となる。

しかし「いつ訴えても勝てる」と思って減給されたまま働いていると黙示の承諾となり、裁判で勝つ確率が著しく下がってしまう。そのため法律に反する減給であれば、早い段階で手を打たないといけない。

黙示の承諾とは
された行為に対して意義を申し立てることがなく、事が進んだことを言う。この場合は会社から減給されたことに対して、何も言わずそのまま働いていた行為が黙示の承諾になったことを意味する。裁判を起こす際に黙示の承諾は書面での合意がなくても、本人からの減給に対する理解があったことを意味してしまう。

会社に対して通知書を提出

減給に対する意義は口頭でも構わないが、後に裁判となるのであれば書面で残しておくほうが有利に働く。その通知書に関しての書き方などはなく、減給額が法律に反すること・減給に合意していないことが分かる内容になっていれば問題ない。

もしこの通知書を会社へメールにて送信したり持ち込んでも構わないが、裁判となったときでも証拠として残るように内容証明郵便で送付しておくことだ。内容証明郵便によって宛先・内容・日付について郵便局が公的に証明してくれる。

労働局に紛争解決援助をお願いする

もし会社との話し合いや書面で解決しなかった場合、労働局に紛争解決援助を申し立てるのも1つの手だ。労働局には紛争解決援助制度があり、事業者(会社)と使用者(従業員)の間でトラブルが発生したときに、どちら側からも申し立てることができる。

法律に詳しくない方でも、労働局から解決策となるアドバイスや場合によっては行政指導を会社側に行ってもらうことができる。この制度自体は無料で行っているため、裁判になるよりも安く済む。

減給するような会社を許してはならない

減給されたことに対して意義を申し立てる方は少なくないが、その場合は「会社を辞める覚悟」で異議を申し立てよう。減給されていることをそのままにしている方も多く、その理由が「会社に居づらくなる」と思っているため。その弱みに付け込んでいるのが会社の考えである。そんな会社にいるのであれば、転職して身を引くほうがよっぽど利口だ。

また経歴書にも「業績不振により希望退職」と記載することもできる。扱いは会社都合にならなくても、その業績不振に関わっている方(経営者や役員など)でなければ転職で不利になることはない。そもそも業績不振で減給するような会社にいても将来は暗い。減給されたことに我慢して働いても、リストラに遭う可能性が高くなるだけだろう。