出来高払い・歩合給の実力主義企業においては能力・成果を正当に評価してくれる反面、売上を上げられない社員に対しては非常に厳しい環境とも言えよう。
「今月は一件も決まらなかった…」
「毎月のノルマを達成できない…」
と、ストレスやプレッシャーに押しつぶされる毎日を過ごしている方も少なくない。またその社員の心理をついて、ノルマを達成できない社員に対して基本給を勝手に減額したり、最低賃金を下回る給与を支給している悪質な会社(いわゆる「ブラック会社」)も多いのだとか。
いくら出来高払いであっても、会社は最低賃金以上を労働者に支払わなければばらず、欠勤以外の理由で基本給を下回る給与を支給してはならない(労働基準法第27条)。
出来高払い制とは
出来高制は「1件の契約で〇万円」というように業務量や売上に応じて給与を基本給に上乗せする給与形態。終身雇用・年功序列の悪しき日本の慣習に対し、欧米風の実力主義・能力主義の風を吹かせるためベンチャー企業や外資系企業を皮切りに、今様々な企業で浸透しつつある。
制度そのものは労働基準法でも認められていて、「うまくハマれば」会社全体の底上げにつながる。
ただし、労働基準法においては基本給を確保した上での労働者の生活安定であるため、賃金の支給全てを出来高に委ねることは許されていない。労働時間に応じて会社は一定の賃金(保障給)を労働者に支払う必要がある。
労働基準法では保障給の具体的金額については定められておらず、その金額については労使間で定めることとされている。保障給を決めるときには、同じ業務に就いている方を目安にすることもあるが、大半は最低賃金もしくは休業手当と同等の賃金を支払うことが慣例。
出来高払いにおける最低賃金の支給対象者
出来高払いで最低賃金が保障されるのは労働基準法の適用される「労働者」のみ。
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法第9条
「労働者」の定義は各種関連法令で意味合いが異なるため逐一確認する必要があるが、労働基準法においては、仕事の指示や勤務時間の拘束、労働環境の提供などがあった場合、会社の支配下にあるものとして労働者とみなされる。
最低賃金の計算方法
保障給は最低賃金は必ず保障され、例えば月給制であれば1ヶ月の総労働時間に最低賃金を乗じたもので計算される。日給制に関しても同様に1日の労働時間に最低賃金を乗じる。
出来高払いでも残業代を請求できる
出来高払い制でも、所定労働時間を労働者に対し定めている会社では残業代として割増賃金を支払わなければならない。たとえ出来高払いにおける賃金が0円(つまり1ヶ月間成果なし)であっても、最低賃金の1.25倍に残業時間を乗じた額を受け取る権利を持つ。
成果を出せないあなたにも責任がある
出来高払いは労働者に対して不利になることばかりではない。歩合給によって給与を多く支給されている方がいるのも事実。そもそも出来高払いにおける最大の狙いは就労意欲の向上、評価の見える化であり、あなたを締め付けるためにあるものではないのだ。
成果を出しているにも関わらず保障給しかもらえない、評価されないというのであれば論外であるが、成果を何一つ出せない状態で弱音ばかり吐いているのであればどこに行っても同じ。ただ、明確にその会社で働く能力が足りていない(仕事がまるで合っていない)というのであれば、自ら身を引く(転職)決断をすべきかもしれない。