ADHDに向いている仕事~転職前に必読すべき心構え

ADHD(注意欠陥/多動性障害)は大人になっても治らない。子供のときは「集中して」「人の話をちゃんと聞いて」と優しい言葉で片付けられていたが、大人になるとそうもいかない。仕事でのミスが続き、上司からは「いつになったら成長するんだ」「何度言ったら分かるんだ」と怒られる(呆れられる)日々を送ることになるだろう。しかしADHDには人にはない能力が隠されていることもあり、独特の感性やひらめき、高いコミュニケーション能力なども持ち合わせている。

ADHDの人が向いている仕事(適職)に出会うことは難しいことではない。単純に自分の好きなことや没頭できることを見つけることが、適職に就くための第一歩となる。その能力の強みを活かせる仕事が適職である。苦手なことがあれば逃げるのも手段であり、強みを活かせる仕事であれば常に成長し続けられるだろう。

「強みを見つけるのが難しい」と思う方もしれないが、まずは今までの経験や性格を基に、どういった能力を持っているか自分を客観視することから始めよう。

ADHDの天職と転職

以下で説明しているものはADHDの方に見られる能力の例。これから適職を見つけるための参考にしてほしい。

独特の感性を持っている

独特の感性とは他の人では思いもつかない発想力を持っていることを指す。集中できない代わりに、常に頭の中では様々なことを考えており、無意識のうちにアイデアが枝分かれのように湧いている。

ただ、このアイデアの中には、役に立たないような雑念がほとんどを占めているため、その中から独創的なアイデアが生まれることは多いことではない。もちろん、その雑念が1つのことに集約されることで発揮されていく傾向にあり、自分が興味を持ったことに打ち込ませることで、役に立たない雑念が意味あるものに変わっていく。

新しいことや情報に敏感

「新奇性追求気質」と言われている能力で、新しい商品や新店舗がオープンすることに思わず気になってしまうことを言う。新しさやスリルを求める傾向にある方を指す言葉でもある。「ADHDは飽きっぽい」と言われている理由の1つで、新しい魅力的なことを探し求めてしまいがちだ。

その分、新しい情報に敏感で周りの人の何倍ものスピードで情報に触れることになる。もちろん得る媒体や情報の種類は幅広く、経済やアニメ、ゴシップネタなどと様々な新しい知識を蓄えている。また興味を持ったことには突き詰めて調べるため、その広い知識は情報通として重宝される仕事も多い。

活発な行動力

多動性のためADHDの人がじっとしていることは極めて難しい。言い方を変えればアグレッシブとも捉えられる。行動力が豊かで考える前に体が先に動いてしまっている。中には失敗することも多いだろうが、行動に移せない人からしたら羨ましい能力である。そのため「新しいことや情報に敏感」ということに付随すると、興味のあるものには自分から行動して、新しい発見を生み出すことに繋がる。

そのため衝動的に行動してしまい、感情がコントロールしにくい反面、その行動力が人を導くリーダー的素質に優れているとも言える。その分ミスも多々あるため、サポートとなる人がその行動に対して考えることができれば、より良い方向に進んでいきやすい。

好きなことには没頭できる高い集中力

「ADHDの人は集中力がない」と言われているのは、自分が興味を持たないものに対してのみの話で、好きなことに関しては寝食を忘れるくらい没頭すると言われている。この現象を「過集中」と言い、一般の人では理解できないほどのものだ。ただ中には喫煙や麻薬、ギャンブルといった危険性のあるものに依存してしまう症状もあるため、全てが上手く働いているわけではない。

その依存症とも言われている過集中は、人の役に立つことや学問の探究、情報収集などといったことにも働き、人一倍集中することが利益を生み出すこともある。そのため、この過集中のおかげで、豊富な知識や作品の創造、研究の発表といった業績を残している人も多い。中には作曲家のモーツァルトや発明家のエジソン、アインシュタインなどもADHDと言われている(推測)。

積極的なコミュニケーション能力

積極的な社交性という能力で、学校や職場ではじっとせず、つい周りの人と話してしまうことは仇となってしまう。しかし、どんな人とも積極的に会話できる人懐こっさはビジネスの場では必要な能力である。また話す相手は外国人・初対面・年齢の離れた人と選ばずとも、誰とでもコミュニケーションを取ってしまうのだ。

ADHDの人は頭の回転が早いこともあり、衝動的に話してしまうことやつい早口でひたすら話してしまう。裏を返せば、それだけ話せるほどの能力と知識、言葉として発するための考えが瞬時に思いついてしまうのである。

そのコミュニケーション能力は非常に高く、新しい情報には敏感なこともあり、時事ネタやスポーツ、学問などと多方面にも及ぶ。ただ衝動的に話しているため、余計なことも話しがち。その部分を自分でコントロールできるようになれば、能力が優れたものとして発揮される。

ADHDの能力が発揮される仕事は多岐に渡る

ADHDの人はミスが多いことを自覚する必要がある。そのため事務処理や医療関係、パイロット、ドライバーなど、自分1人のミスで周り方に迷惑をかけてしまうものや命に関わるような仕事は向かない。

ADHDの人はとにかく自分をコントロールし、拘束時間が長く、業務量が多い仕事は苦手である。かといって職種が限られるわけではなく、ADHDの人でも向いている仕事は多岐に渡る。

独特の感性・集中力が発揮されるクリエイティブ系

  • デザイナー
  • イラストレーター
  • アーティスト
  • 漫画家
  • 建築家
  • プログラマー 他

専門性が高くクリエイティブの要素を持った仕事。「絵が得意」「漫画が好き」「ゲームが好き」といった、興味を持つきっかけは単純なものである。特に「好きなことに没頭できる」という能力を活かせるもので、どの仕事も専門的でそれ以外のことを求められていない。

主な成功者の例を挙げると、Apple社の創設者スティーブ・ジョブズがADHD気質だったと言われている。

新しい情報に敏感な方にはメディア系

  • 記者・ライター
  • カメラマン
  • TVディレクター
  • メディア編集者 他

情報収集といった分野の能力に優れた人に向いており、何より新しい情報に敏感であることが重要とされている仕事。その情報は多岐に渡り、流行やゴシップネタ、芸能ネタにいち早く気づける能力が活かせる。

何かを作り出すクリエイティブ系とは異なるため、没頭するような集中力とは異なり、常に情報に対するアンテナが張り巡らされているのだ。また情報の中からは誰も思いつかないような、独創的な考えが働くこともある。メディア系の有名人として、「E.T.」や「ジュラシックパーク」などを手掛けた映画監督のスティーブン・スピルバーグが挙げられる。

行動力・コミュニケーション能力が活かされる接客系

  • 営業職(外回り)
  • ショップ店員
  • インストラクター

行動力・コミュニケーション能力は人と接することで発揮される。そのため営業職やショップ店員に向いている傾向がある。特にマンツーマンで対応することの多い職場では、集中力が散漫になることがないため、相手との会話が上手くいきやすい。

そのため営業職でも大勢の前でプレゼンするような仕事に就いていた人が、マンツーマンでの商談がメインとなっている仕事に転職して成功するケースも考えられる。単に営業が向いていなかったのではなく、大勢の前では緊張してしまったり集中力が持たなかっただけの話。

またインストラクターといっても、得意なスポーツや筋トレ、フィットネスと多岐に渡っているため、好きなものを選ぶことで発揮される。

ADHDの人が適職に就いたときの能力は多大

ADHDの人を「社会不適合者」と表現する方も多いが、むしろ適職に就いたときは一般の人よりも能力が発揮される存在である。確かに興味のない仕事や苦手な仕事では成長が著しく低下してしまい、雑な扱いを受けてしまうかもしれない。

それは「自分には合わなかった」と開き直って新しい仕事を見つければいいだけの話。自分がADHDであることを悲観的に考えず、むしろポジティブに仕事探しを楽しんでほしい。もちろん一般の人に比べて失敗は多いかもしれないが、これだけ多くの職種・業界にあふれた中で向いていない仕事を見つける方が難しいだろう。

しかし、過信するな。思い上がるな。これだけは忘れないように。全ての基準値を下回り、何もかも不得手のADHDの人間の方が数多い。

スピルバーグだスティーブ・ジョブズだというのは、基準値が元から高く、更に他の能力が特別秀でているという超レアケース。そもそも普通の人とは違う人を同じものとして比較することなどできない。ADHDは全員症状が違う。この記事を読んですぐさま暴走してしまってはこれまでの二の舞い。少なくとも一人で仕事を探すのではなく、多くの人間から声をもらい、それを参考に探す(探してもらう)のが得策だろう。


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