今回は、マンション管理会社の評判について解説する。不動産業界は「開発」「販売」「管理」と大きく3つに分けれらるが、その中の「管理」に当たるのがマンション管理会社の役割。
実際にマンションを購入した方のサポート・マンションの管理・維持修繕を担当するため、企画や販売と異なり、異動や担当変更がない限り、お客様とは長い長い付き合いになる。居住者と親交関係を深めていくこともできるが、いわゆる「クレーム産業」でもあるため入社には相当な覚悟が必要。
隠れブラック産業~マンション管理業界の裏
これは高校の同窓会で久々に会った友人から聞いた話だ。その友人は、新卒として某財閥系のマンション管理会社に入り、今でも働いているそうだが「自分の子供にはこの業界に入って欲しくない」と語っていた。
自分自身が人事として業種間を超えた交流があったり、色々な業界の裏側を知ることが多いのだが、「マンション管理」という業界については実はよく知らなかった。興味があったので色々と聞いてみると、中々パンチが効いており、あまり知られていないが故に「うっかり」ブラックの地に足を踏み入れてしまう新卒社員が多いのだという。
新卒入社としてマンション管理業界がおすすめできない理由
365日休みなしのクレーム産業
「マンション管理」というのは簡単に言うと、マンションという共同生活を円滑にさせるための仲介人。マンション1棟に対し原則1人が営業担当として付き、総会・理事会の運営、マンションの修繕、隣人トラブルなどを解決するためにいる人。
従って居住者としては、「何かあれば」担当に連絡して問題を解決してもらえる。マンションといっても10戸程度の小さな規模から、1000戸以上の団地を形成するものまであるため、その問題の質は様々。
・隣の居住者がうるさい
・水道が破裂した
・管理人が昼寝をしている
・エントランスで猫が死んでいる
・管理費が支払えない
・鍵をなくして入れない
・ゴミ捨て場が臭い
などなど・・・。特に治安が悪い地域ほどこのクレームの質が低下し、担当者としては頭を抱えてしまう。「暮らし」をサポートするお仕事であるため、当然担当者でには休みというのがなく、ひっきりなしに電話がかかってきてしまう。中でも、隣人トラブルに関しては当事者以外「解決できない」問題であり、共同生活を行う上でのマナーやエチケットは居住者に委ねられる面も大きい。
何より、居住者自身が「マンションは自分たちのもの」という意識が希薄であり、それ自体がマンションの資産価値を落としていることを知らない。資産価値が高いマンションは総じて管理組合の意識が高く、マンション管理会社に依存しておらず、良い意味でビジネスライクな関係性を築いているものが多い。
不動産知識・設備知識など総合的な経験・対応力が求められる
「マンション管理」と一言で表しても、
・不動産に関する法律知識
・共同生活を行う上での民放知識、クレーム対応能力
・水道、電気、建築、インターネット等の設備関連知識
・理事会、総会、イベント運営のためのコミュニケーション能力
こういった幅広い知識やスキルが求められ、新卒として何も知らない状態で入社してしまうと、情報量が多すぎてパンクしてしまう。
また、「なんで社会人にもなってこんなことを…」「これって俺がやる仕事なのか…」と思うような仕事もしなければいけない(掃除・草むしり・下水排水・雪かきなど)。
事務作業が業務の7割
また、あまり知られていないがマンション管理の業務の7割近くは「事務作業」だ。
担当物件数にもよるが、物件は月1回マンションの理事会を開催し、年1回総会を開催することが通例。従って、担当物件数が増えれば、ほぼ全てそれに向けた「準備」に毎日追われることとなる。大体10~30物件当たりを任せられ、ほぼ毎週末どこかしらの理事会・総会が開催されている。
・理事会に向けた資料・議案作成と配布
・理事会終了後、議事録の作成と配布
・総会に向けた資料・議案作成と配布
・総会終了後、議事録の作成と配布
その友人は担当物件数15、総戸数3500戸だとか・・・。その全ての資料のホチキス止めからポスティングまで、自分や管理人、後輩と一緒に地道に行っているそうだ。
親会社の管理下・・・会社に戻っても逃げ場なし
マンション管理会社の「大手」と言われるところはすべて、デペロッパーとして大きな不動産会社が親会社として存在するはずだ。
・三井不動産レジデンシャルサービス(三井不動産)
・三菱地所コミュニティ(三菱地所)
・東急コミュニティー(東急不動産)
・住友不動産建物サービス(住友不動産)
・野村不動産パートナーズ(野村不動産)
・東京建物アメニティーサポート(東京建物)
こうした有名どころの会社だと、まず間違いなく上司は親会社の天下りや出向組だろう。
「大手」の管理会社のはずなのに、それよりも大きな親会社に管理された会社であることが多い。力関係がハッキリしており、非常に働きにくい。親会社と居住者と板挟みになり、一体なんのために・誰のために働いているのか自問自答し、やめてしまう社員が多いのだとか。中々悩みとしては深く、新卒として入るには社会的な難易度が高い。
給料が安い・割に合わない
高い専門知識に、ほぼ365日24時間体制の勤務、一人あたり10〜30以上の物件を持たされる。それでいて給与は、400万〜500万が平均というところ。
財閥系でもこの給与面はあまり変わらない。退職の理由はこれが最も高く、「割に合わない」と辞めていく社員が多いのだとか。
離職率が高く、業界的にも新卒をあまり取らない
また業界としても非常にニッチで、新卒をあまりとらず縮小気味なのも問題。
マンションで暮らしたことがない人にとっては「そんな仕事があるの?」と思われるほど狭い業界だが、いわゆるハイタワーマンション、ブランドマンションには必ず管理会社が付き、それこそホテル並みのもてなしをサポートしてくれる。
居住者と信頼関係を築いていったり、高級マンションを担当するようになれば有名企業の社長や芸能人・著名人に普通に会えたり、連絡を取るようなこともあり、その点での面白みもある。
逆に、高級マンション・タワーマンションを担当するようになれば、お客様の質も良くなりクレームはほとんどないのだとか。そこまで行くのが大変だが、そこを任せられるようになれば、マンション管理の営業マンとして一人前と認められた証かもしれない。